日本百名山とは?深田久弥が決めた選定基準と100座の特徴
公開
日本百名山とは、作家で登山家の深田久弥が、自分で登頂した山の中から「山の品格・山の歴史・個性のある山」の3つを基準に、標高おおむね1,500m以上を原則として選んだ100座です。出典は1964年7月に新潮社から刊行された山岳集『日本百名山』で、北は利尻山(北海道)から南は宮之浦岳(鹿児島県)まで、31都道府県に分布しています。100座の位置・登山口・アクセスは日本百名山の一覧と地図で確認できます。
最も高いのは富士山の3,776m、最も低いのは筑波山の877mです。標高3,000mを超える山が13座あり、標高1,500m未満の山は5座だけです。
日本百名山の選定基準は「品格・歴史・個性」と標高1,500m
深田久弥は『日本百名山』の後記で、山の品格・山の歴史・個性のある山の3つを選定基準に挙げ、標高はおおむね1,500m以上を原則にしました。さらに、深田本人が山頂に立った山であることを絶対の条件にしています。少年のころから約50年、全国の山に登った経験が選定の根拠になっています。
- 第1の基準:山の品格
- 人に人格があるように、山には「山格」があるという考え。誰が見ても立派だと感じる山。
- 第2の基準:山の歴史
- 昔から人とのかかわりが深く、信仰の対象として山頂に祠がまつられているような山。
- 第3の基準:個性のある山
- 芸術作品と同じように、山容・自然現象・伝統などに、ほかの山には無い際立った個性がある山。
付け加えた条件:本人の登頂と、標高おおむね1,500m以上
標高1,500m未満で選ばれたのは、次の5座です。深田は弥彦山・比叡山・英彦山を名山と認めながらも、標高が低いことを理由に選んでいません。
| 山 | 標高 | 都道府県 |
|---|---|---|
| 筑波山 | 877 m | 茨城県 |
| 開聞岳 | 924 m | 鹿児島県 |
| 伊吹山 | 1,377 m | 滋賀県・岐阜県 |
| 天城山 | 1,406 m | 静岡県 |
| 阿寒岳(雌阿寒岳) | 1,499 m | 北海道 |
選定基準を公表した場:1961年の上高地「ウェストン祭」
深田は1961年、上高地の祭である「ウェストン祭」の講演で、日本百名山の選定基準を披露しました。ウェストン祭は、日本アルプスを世界に紹介した英国人宣教師ウォルター・ウェストンを記念する行事です。
日本百名山はいつ・誰が選んだか:深田久弥と『日本百名山』の成り立ち
日本百名山を選んだのは、石川県大聖寺町(現在の加賀市)生まれの作家・登山家、深田久弥(1903〜1971年)です。雑誌の連載を約1年かけて推敲し、1964年に単行本として刊行しました。翌年には第16回読売文学賞(評論・伝記賞)を受けています。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 朋文堂の山岳雑誌『山小屋』で「日本百名山」の連載を始める(全10回・20座まで) | |
| 朋文堂の雑誌『山と高原』で毎月2座の連載を始める。初回は鳥海山と男体山 | |
| 50回の連載が完結。最終回は筑波山と富士山 | |
| 新潮社から単行本『日本百名山』を刊行 | |
| 第16回読売文学賞(評論・伝記賞)の贈賞式 | |
| 山岳雑誌『岳人』で「世界百名山」の連載を始める(41座で絶筆) | |
| 山梨県の茅ヶ岳に登山中、脳卒中で亡くなる。『日本百名山』の山の入れ替えは行われないまま |
『日本百名山』は登山ガイドではなく山岳随筆
『日本百名山』は、1座あたり約2,000字(4ページほど)で、山の地誌・歴史・文化・山容と、深田自身の登頂の記録をまとめた随筆集です。登山道や所要時間を案内する本ではありません。登山の計画には、各山の登山口・ルート・バスをまとめた山のページを使ってください。
日本百名山100座の特徴:標高・山域・都道府県
日本百名山は本州中部の山岳地帯に集中していて、長野県だけで30座(県境の山を含む)あります。一方、千葉・愛知・京都・大阪・兵庫・和歌山・島根・岡山・広島・山口・香川・高知・福岡・佐賀・長崎・沖縄の16府県には1座もありません。西日本は高い山が少なく、標高の原則にあてはまる山が限られるためです。
標高が高い日本百名山・低い日本百名山
| 順位 | 山 | 標高 | 都道府県 |
|---|---|---|---|
| 1 | 富士山(剣ヶ峰) | 3,776 m | 静岡・山梨 |
| 2 | 北岳 | 3,193 m | 山梨 |
| 3 | 穂高岳(奥穂高岳) | 3,190 m | 長野・岐阜 |
| 4 | 間ノ岳 | 3,190 m | 山梨・静岡 |
| 5 | 槍ヶ岳 | 3,180 m | 長野・岐阜 |
| 順位 | 山 | 標高 | 都道府県 |
|---|---|---|---|
| 1 | 筑波山(女体山) | 877 m | 茨城 |
| 2 | 開聞岳 | 924 m | 鹿児島 |
| 3 | 伊吹山 | 1,377 m | 滋賀 |
| 4 | 天城山(万三郎岳) | 1,406 m | 静岡 |
| 5 | 阿寒岳(雌阿寒岳) | 1,499 m | 北海道 |
山域別の日本百名山の数
次の表の山域は、このサイトの一覧で使っている区分です。最も多いのは関東・上信越の21座、次が北アルプス・御嶽の16座です。
| 山域 | 山の数 | 標高の高い山 |
|---|---|---|
| 北海道 | 9座 | 大雪山、トムラウシ山、十勝岳 |
| 東北 | 14座 | 鳥海山、会津駒ヶ岳、飯豊山 |
| 関東・上信越 | 21座 | 奥白根山、浅間山、男体山 |
| 北アルプス・御嶽 | 16座 | 穂高岳、槍ヶ岳、御嶽山 |
| 八ヶ岳・中信 | 4座 | 八ヶ岳、蓼科山、美ヶ原 |
| 奥秩父・南関東 | 9座 | 富士山、金峰山、甲武信ヶ岳 |
| 中央アルプス | 3座 | 木曽駒ヶ岳、空木岳、恵那山 |
| 南アルプス | 10座 | 北岳、間ノ岳、悪沢岳 |
| 北陸・近畿 | 5座 | 白山、大峰山、大台ヶ原山 |
| 中国・四国 | 3座 | 石鎚山、剣山、大山 |
| 九州 | 6座 | 宮之浦岳、九重山、祖母山 |
都道府県別の日本百名山の数
| 順位 | 都道府県 | 山の数 |
|---|---|---|
| 1 | 長野県 | 30座 |
| 2 | 山梨県 | 12座 |
| 3 | 群馬県 | 11座 |
| 4 | 北海道 | 9座 |
| 5 | 新潟県 | 9座 |
| 6 | 富山県 | 9座 |
| 7 | 岐阜県 | 9座 |
| 8 | 静岡県 | 8座 |
| 9 | 山形県 | 6座 |
| 10 | 福島県 | 6座 |
日本百名山に選ばれなかった候補の山
深田は後記で、未登頂・標高の低さ・観光開発を理由に外した候補の山を挙げています。及第すれすれの山を落とす心情について、深田は次のように書いています。
愛する教え子を落第させる試験官の辛さに似ていた
| 地域 | 候補の山 | 外した理由 |
|---|---|---|
| 北海道 | ニペソツ山・石狩岳・ペテガリ岳・芦別岳・樽前山など | 未登頂 |
| 東北 | 森吉山・姫神山・船形山 | 標高が低い |
| 北陸 | 笈ヶ岳・大笠山 | 未登頂 |
| 関西 | 藤原岳・比良山 | 標高が低い |
| 関西 | 御在所岳 | 山頂が遊園地化していた |
| 中国 | 氷ノ山 | 中国地方からは大山1座だけを選んだ |
| 九州 | 由布岳・市房山・桜島 | (候補として挙げたが選外) |
深田が挙げた候補の多くは、1984年に深田のファン組織「深田クラブ」が選んだ日本二百名山の一覧に入っています。
出版後に深田が評価した山:ニペソツ山
深田は出版後も山に登り続け、1971年刊行の『山頂の憩い-「日本百名山」その後』で約20座を紹介しました。北海道のニペソツ山については、出版時には見ていなかったため選ばなかったが、登って初めて立派な山だと知ったと書いています。
日本百名山ブーム:テレビ番組と最短の完登記録
『日本百名山』は登山ガイドではありませんが、「登るべき100座」として読まれ、日本百名山ブームが21世紀まで続いています。テレビ番組と、全100座を短い日数で登る挑戦がブームを広げました。
日本百名山を扱ったテレビ番組
- NHK BS2『日本百名山』:に八ヶ岳から放送開始
- NHK BSプレミアム『にっぽん百名山』:に大台ケ原山から放送開始(2023年12月からNHK BS)
完登の記録と一筆書き
| 年 | 登山者 | 日数 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 平田和文 | 66日 | 連続での完登(当時の最短記録) | |
| 島津康一郎 | 48日 | 6月14日〜7月31日の連続での完登 | |
| 藤川健 | 33日 | 9月1日〜10月3日の連続での完登 | |
| 田中陽希 | 208日11時間 | 徒歩と海峡のカヤックだけで約7,800kmをつなぐ(NHK「グレート」) |
完登の計画の立て方は百名山の制覇(完登)に必要な日数と回る順番にまとめています。
ブームへの批判:山小屋の混雑と登山道の荒廃
日本百名山だけに登山者が集まり、シーズン中の山小屋がツアー客で混雑し、登山道が荒れるという批判もあります。京都の生態学者で登山家の今西錦司は、百名山の基準は関東中心で絶対的ではないと述べています。
日本百名山とほかの百名山の違い:二百名山・三百名山・花の百名山
日本百名山のほかにも「百名山」と名の付くリストは多く、選んだ人・時期・基準がそれぞれ違います。日本二百名山と日本三百名山は、日本百名山の100座をそのまま含みます。
| リスト | 選んだ人・団体 | 年 | 山の数 |
|---|---|---|---|
| 日本百名山 | 深田久弥 | 1964年 | 100座 |
| 日本三百名山 | 日本山岳会 | 1978年 | 300座(日本百名山を含む) |
| 花の百名山 | 田中澄江 | 1980年 | 100座 |
| 日本二百名山 | 深田クラブ | 1984年 | 200座(日本百名山を含む) |
| 関西百名山 | 山と溪谷社大阪支局 | 1998年 | 100座 |
地方・県の百名山を含む21のリストは百名山の種類で比べられます。
日本百名山の読み方・数・最高峰についての質問
日本百名山の読み方は?
「にほんひゃくめいざん」と読みます。「百名山」「100名山」と略して呼ばれることもあります。
日本百名山は誰が決めたの?
作家で登山家の深田久弥です。1964年刊行の『日本百名山』(新潮社)で、自分で登った山から100座を選びました。国や自治体が定めたものではありません。
日本百名山で一番高い山・一番低い山は?
一番高いのは富士山(3,776m)、一番低いのは筑波山(877m)です。
日本百名山が無い都道府県は?
千葉・愛知・京都・大阪・兵庫・和歌山・島根・岡山・広島・山口・香川・高知・福岡・佐賀・長崎・沖縄の16府県です。
日本百名山の山が入れ替わることはある?
ありません。深田久弥は山の入れ替えを考えていましたが、1971年に亡くなったため、1964年の100座のままです。
出典:ウィキペディア「日本百名山」・「深田久弥」・「田中陽希」(確認日 )。標高・都道府県はこのサイトのデータ(国土地理院の標高)